緩和ケアについて

更新日 2025年03月13日

治療する

(執筆  聖路加国際病院 緩和ケア科  林 章敏 先生)

  • A
    特定非営利活動法人日本緩和医療学会では、市民の方向けに緩和ケアを以下のように説明しています。

    「緩和ケアとは、重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」

    また、WHO(世界保健機関)は、緩和ケアの定義を以下のように定めています。

    「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、 痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、 苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。」
  • A
    特に違いはありません。
    ホスピスという名称を使用する施設では、キリスト教など宗教を理念の基盤としている施設(病院)が多い傾向にあります。
  • A

    公的医療保険の対象となっており、医療費、食費については、全国一律です。入院期間によってそれぞれ下記のように定められています。緩和ケア病棟入院料1の病院か、緩和ケア病棟入院料2の病院かは、病院ごとに決められていますのでお尋ねください。

    それぞれの入院費に自己負担分を掛けたものがお支払金額になります。また、高額療養費制度の対象になりますので、その限度額を超えた金額については、手続きによりご負担いただく必要はなくなります。

    また施設によっては個室料が別途かかる場合があります。 無料個室が用意されている施設もありますので、御利用施設の相談窓口にお問い合わせください。

    緩和ケア病棟入院費

    平成31年3月1日時点 1~30日 31日~60日 61日以上
    緩和ケア病棟入院料1 50,510円 45,140円 33,500円
    緩和ケア病棟入院料2 48,260円 43,700円 33,000円
    横スクロールできます

    なお、公的医療保険の対象となりますので、介護保険を利用することはできません。

  • A
    がん治療はできますか?
    ホスピス・緩和ケア病棟では、抗がん剤による治療は行わない施設(病院)がほとんどです。放射線治療は症状緩和のために行うことがあります。
    施設により多少異なりますので、詳しくは施設(病院)にお問い合わせください。

    輸血や点滴など医学的治療は何もしてくれないのでしょうか?
    通常の診療は患者さんや御家族と相談して行います。
    一般的に、レントゲンや血液検査、点滴など全身状態を維持するために必要な検査や治療は行います。
    必要に応じて、症状緩和のための輸血、外科的治療や放射線治療が行われることがあります。

    民間療法はできますか?
    医師や看護師から勧めることはありませんが、御本人が望んだ場合に、持参されたものを使用していただけることがあります。
    ただし、医学的に見て、明らかに体に良くないと思われるもの、他の患者さんの御迷惑になるものなどはお断りすることがあります。
  • A
    待機期間は施設(病院)によって、また、その時の利用状況によってかなり異なります。
    御利用になりたい施設(病院)に直接お問い合せ下さい。
  • A
    基本的には介護保険の適応となります。状況によっては、公的な医療保険を利用したり、自費となる場合がありますので、それぞれの病院やケアマネージャーにお尋ねください。
  • A
    ホスピス・緩和ケア病棟の利用対象となる患者さんは、現在の保険上は「主として苦痛の緩和を必要とする悪性腫瘍の患者又は後天性免疫不全症候群(エイズ)の患者」となっています。
    したがって、現状では、その他の病気での利用は困難となっています。難病等の病気については、専門病棟を設置している病院もありますので、病院のソーシャルワーカーなどにお問い合わせください。
    緩和ケア外来や緩和ケアチームでは難病の患者さんを対象としている病院がありますので、お問い合わせください。
  • A
    もちろん受けられます。
    緩和ケアチームの診療を受けたからといって、ホスピス・緩和ケア病棟へ入院しなければならないということではありません。
    がんに対する治療を行なう、在宅で療養するなど選択肢がいろいろあると思います。御自分に一番合った方法を主治医と御相談下さい。
  • A
    まずは、通院中の医療機関の主治医または医療相談室に御相談ください。
    かかりつけ医がいない場合は、在宅ホスピス緩和ケアを行なっている診療所や訪問看護ステーション、ホスピス・緩和ケア病棟にお問い合わせください。
  • A
    申請すれば利用できます。 65歳以上の場合は、要介護認定を受け、要支援から要介護5までの状態に認定されれば、介護保険サービスが受けられます。
    また、40歳~64歳の場合でも、「がん疾患で、医師が医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと認められるものに限る」という条件がつきますが、介護保険サービスが受けられます。
  • A
    いいえ、できる限り在宅で過ごしていただきながら、患者さんや御家族の状況によって、在宅療養が困難になった場合には、ホスピス・緩和ケア病棟や一般病棟に入院ができます。在宅ホスピス緩和ケアを行っている診療所等は、入院のできる支援病院と連携しています。
    ホスピス・緩和ケア病棟によっては、御家族が休息するために患者さんが短期間入院する「レスパイト入院」を受け入れる施設(病院)もありますので、御相談ください。
  • A
    WHO(世界保健機関)では、緩和ケアの定義と併せて、その内容を次のようにまとめています。

    (1) 痛みやその他のつらい症状を和らげる

    (2) 生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える

    (3) 死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない

    (4) 心理的およびスピリチュアルなケアを含む

    (5) 患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する

    (6) 患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する

    (7) 患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用し、必要に応じて死別後のカウンセリングも行う

    (8) QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある

    (9) 病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、つらい合併症をよりよく理解し対処するための精査も含む

    これらの事を、様々な医療・福祉職のメンバーがチームとしてケアを提供しています。
  • A
    いつでもどこでも受けられることを目指しています。具体的には次の4つの状況で受けることが可能です。

    1 緩和ケア外来
    診断の前や直後、外来でのがん治療中に対応します。
    がん診療連携拠点病院などや緩和ケア病棟を持つ病院に設置されています。

    2 緩和ケアチーム
    入院中、入院している病室へ緩和ケアチームが伺います。緩和ケアチームは、がん診療連携拠点病院などに設置されています。

    3 緩和ケア病棟
    緩和ケア専門の病棟でケアを提供します。「東京都がんポータルサイト」で確認できます。
    東京都内の緩和ケア病棟施設

    4 在宅緩和ケア
    自宅に訪問診療医や訪問看護師が伺い、患者さんの苦痛症状を和らげたり、精神的支援や環境の整備を行なったりします。介護保険を申請していただける場合には、ケアマネージャーが自宅近くのサービスを紹介します。
  • A
    基本的には、がんと診断された時から受けられます。外来や緩和ケアチーム、緩和ケア病棟によってそれぞれ受け入れる時期は異なります。

    外来
    がんと診断された時から

    緩和ケアチーム
    がんと診断された時から

    緩和ケア病棟
    抗がん剤での治療を終了してから受け入れるところが多いですが、施設(病院)によって多少異なります。
  • A
    緩和ケアの定義にもあるように、重い病を抱える患者とその家族が対象となります。しかし、多くのホスピス・緩和ケア病棟では、がん患者とその家族を対象としています。
  • A
    担当の医師や看護師に御相談ください。適切な緩和ケアチームや病棟、外来を紹介してもらえると思います。
    担当の医師や看護師が詳しくない場合は、お住まいの地域のがん診療連携拠点病院へ御相談ください。
    また、担当の医師や看護師から勧められる場合もあると思います。その場合は、御自分の希望をお伝えした上で、よく御相談ください。
  • A
    痛み止めなどの薬剤(内服薬や貼布剤、注射薬)を使用することが一般的です。場合によっては、神経ブロックや放射線療法を行う事があります。
    強い痛みの場合には、モルヒネをはじめとした医療用麻薬を使用することがあります。これは、痛みの強さによって選択しており、命の長さによって選択するものではありません。医師の指示に従うことで安全に使用することができます。
  • A
    まずは、最寄りの緩和ケア病棟のある病院へ御相談ください。担当者が手続きについて詳しく御説明します。
    多くの施設(病院)では予約の上、診療情報提供者や参考となる画像資料を持参して緩和ケア外来を受診して頂き、担当者と相談の上で検討します。
  • A
    「この時期でなければいけない」という取り決めはありません。
    手術や抗がん剤などの治療を行なうよりも、苦痛症状を緩和する治療を中心に行なうほうがよい時期であれば入院が可能です。