支持療法について

更新日 2025年03月11日

支持療法とは

 「支持療法」とは、がんそのものによる症状や、治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことをいいます。例えば、化学療法の副作用である嘔気・嘔吐に対する制吐剤(吐き気止め)の使用、口内炎に対する口腔ケア、皮膚や爪の障害に対する治療やケア、薬物療法の副作用である貧血や血小板減少に対する適切な輸血療法などは、支持療法の代表的な例です。
 支持療法を適切に行うことで、副作用による患者さんの心や体の苦痛が軽減されたり、苦痛が生じることを未然に防ぐことができるため、治療中の生活の質が改善することにつながります。

さまざまな症状に対して行う支持療法

①痛みに対して行う支持療法

がんの症状の中でも痛みはよくあるものの一つです。中には激しい痛みを伴うものもあります。しかしながら、痛み止めを服用することで、その症状を和らげることが出来ます。
 痛みが強くなってから使用すると効果が出づらくなることがあるため、早いうちから使用することが効果的です。<br>
痛み止めには下記のようなものがあります。
非オピオイド鎮痛薬

がんの痛みのうち、弱い痛みには非オピオイドの解熱鎮痛薬を使用します。
解熱鎮痛薬は、炎症を抑える作用がある非ステロイド性抗炎症薬と、炎症を抑える作用をもたないアセトアミノフェンに分けられます。

オピオイド鎮痛薬

非オピオイド鎮痛薬では痛みがとれない場合に使用します。
オピオイド鎮痛薬とは、痛みを神経系に作用して抑制する薬で、がんや慢性痛にしばし用いられます。法律で医療用に指定されているオピオイド鎮痛薬は医療用麻薬と呼ばれています。「麻薬」というと幻覚・妄想といった知覚障害・思考障害などを引き起こすものを想像される方が多いかと思いますが、医師の指示のもと、適切に使用すれば不正麻薬のように中毒になることはありません。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬とは、痛みの治療薬として開発された薬ではありませんが、痛みの治療に用いられる薬の総称です。
神経の損傷による痛み(神経障害性疼痛など)の治療において、他の薬では痛みをとりきれない、ほとんど効果が期待できない場合に使用します。

②治療の副作用に対して行う支持療法

がんの治療のために抗がん剤などの薬物療法を行うと、がん細胞だけではなく、正常細胞に影響を及ぼし、さまざまな症状が出現します。これを「副作用」と言います。薬物療法の副作用は、治療薬の種類によってさまざまです。
ここでは、代表的な副作用とその対処方法について紹介いたします。

  • 吐き気、嘔吐
    制吐剤や点滴の使用
    複数回に分けた食事
    小さいお皿に盛り付けるなど盛り付けを少量にする
  • 食欲不振
    冷たいもの、のど越しの良いもの、やわらかいものを食べる(麺類、ゼリー、果物など)
  • 倦怠感、関節痛
    休息をとる
    運動やマッサージを行う
  • 便秘、下痢
    緩下剤や座薬の使用 (便秘の場合)
    止痢剤の使用 (下痢の場合)
    水分をとる
    消化のよい食べ物を食べる
  • 脱毛
    ウィッグや帽子の使用
    刺激の少ないシャンプーの使用
    爪を短く切る

    東京都では、脱毛や乳房の切除など、がん治療に伴う外見(アピアランス)の変化の悩みを抱えている患者さんに対し、ウィッグなどの購入等にかかる費用を助成する区市町村を支援しています。
    詳しくは下記よりご覧ください。

  • 鎮静剤の使用
    手を握ったり開いたりする
    温かい湯、冷たい水に交互に手足をつける
  • 皮膚症状
    保湿剤、ステロイド外用薬、抗菌薬(外用、内服)の使用
    天然素材(綿や絹)の下着、衣服の使用
    熱いシャワーを避ける
    爪を短く切る
    日傘、長袖、帽子、手袋の着用
  • アレルギー
    抗アレルギー薬の使用
    バランスの良い食事
    十分な睡眠

緩和ケア

 支持療法と類似するものとして緩和ケアがあります。
WHO(世界保健機関)では緩和ケアを「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。」としています。
東京都では、緩和ケア病棟を有する医療機関の紹介等をしています。
詳しくは下記よりご覧ください。