問診から治療へ

更新日 2025年03月13日

治療する

(執筆・監修  公益財団法人がん研究会有明病院)

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    がんと診断するには、画像診断、臨床診断などもありますが、最終的に確定させる診断は「病理診断」となります。
    病理診断でがんが確定して初めてがんの治療に入れます。
    病理診断の段階はいくつかあり、治療の前に腫瘍の一部を切り取って、がんかどうかの診断を行う「生検診断」、手術中にがんの組織の型や広がりを確認する「術中迅速診断」、手術で切り取った材料を詳しく検索して病理学的に分類し、がんの病理的性質を調べる「手術材料の診断」などがあります。
    なお、病院内でそれらの病理診断を担当しているのは「病理部」「病理診断科」と呼ばれる部署で、「病理医」と呼ばれる医師が診断を行っています。
  • A
    がんの治療は、基本的に「手術療法」「化学(薬物)療法」「放射線療法」の3種類の中から、個々の患者の状態に合ったものを選び、組合せて行います。
    治療法の選択に当たって、医師は、がんの進行度合いやがんの大きさ転移の有無など、様々な情報を収集します。
    こうした情報に基づいて、患者と相談しながら、最も適した治療内容が決定されます。
    また、治療方法が難しいケースや診断に苦慮する場合には、医師が一人で判断せず、多くの専門の医療スタッフが集まり、治療内容を話し合うこともあります。これは、「キャンサーボード」と呼ばれ、がん治療において複合的かつ横断的に患者の状態を適切に評価し、今後の治療戦略を立てる重要な場となっております
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    害はありません。耳には聞こえない音波「超音波」です。身体に影響することはありません。
  • A
    特に外す必要はありませんが、首の検査のときはネックレスを外していただきます。
  • A
    担当医師の診察時に説明を聞いてください。通常、検査室ではお答えできません。
  • A
    検査項目によって、検査と当日の飲食の制限や、膀胱に尿を貯めた状態で検査することがあります。超音波検査予約時に、スタッフからの指示や外来から渡される注意事項等に従ってください。
  • A

    患者の病気や状況によって様々ですが、おおよそ次のような内容が聞かれます。
    ○ 今困っている体の場所や状態・経過など
    ○ 受診しようと思った具体的なきっかけ
    ○ 現在治療を受けている他の病気や内服薬など
    ○ 今までにかかったことのある病気やケガなど
    ○ 家族で同じような病気にかかったことがあるかなど

  • A
    放射線治療とは、エックス線、電子線、ガンマ線などの放射線を用いて、がんを安全かつ効果的に治療する方法です。
    放射線は、がん細胞内の遺伝子(DNA)にダメージを与え、がん細胞を壊します。放射線によって、正常細胞も同様にダメージを受けますが、がん細胞とは異なり、自分自身で修復することができます。放射線治療によって、がんを治したり、がんの増大による痛みなどの症状を緩和したりします。
    病気の状態に合わせて、放射線治療のみで治療を行うこともありますが、他の治療方法と組み合わせて放射線治療を行うこともあります。例えば、早期の前立腺がんや喉頭がんは、放射線だけで治療を行いますが、乳がんや進行期の直腸がんでは、手術や薬物療法と組み合わせて治療します。
    なお、放射線治療は薬物療法とは異なり、同一部位に一定の期間をあけて繰り返し治療することは通常ありません。
  • A

    放射線治療中、たいていは普段通りの生活を続けることができます。放射線治療の内容や日程によっては、仕事をしながら治療に通うことも可能です。
    しかし、少しだるかったり、疲れやすくなったりする場合があります。治療部位に応じた副作用が見られたりすることがあります。
    適切に休息をとり治療が中断しないように注意してください。また、飲酒を控え、禁煙に心掛けてください。

  • A
    放射線治療中も通常通りお風呂に入っていただいてもかまいません。治療の位置を合わせるマークが皮膚に描かれていることがありますが、これは消さないように注意してください。湯船に入ったり、石鹸水が流れても問題ないですが、マークの上をこすったりしないように注意してください。
    また、放射線があたっている皮膚は、赤くなったり、刺激に対し、敏感になったりしています。温かいお湯と肌に優しい石鹸で清潔にし、こするなどの強い刺激を与えないようにしましょう。化粧水や絆創膏などは担当医師に確認してから使用してください。
  • A
    特に決まりはありません。
    頭頸部がんや食道がん、肺がんなどでは、放射線の副作用によって、のどの痛みや飲み込みにくさが出現することがあります。やわらかい物や刺激の少ない食べ物をとるようにしてください。アルコールについては、担当医師に相談してください。
  • A
    放射線はがん病巣など体内でエネルギーに変換され消えてしまいます。
    治療が終わった後に、周囲の人に影響を与えることは全くありません。子供にも通常通り接することができます。
    前立腺がんの小線源治療のように放射性物質を病巣内に挿入する場合、微量な放射線が体外に放出されます。体から出る放射線が危険のない範囲に下がるまで、専用の病室に入院していただく場合があります。退院後は、家族や周囲の人たちに悪い影響を与えることはありませんが、詳細については担当医師にお尋ねください。
  • A
    胸部エックス線撮影やCT検査と同様に、放射線があたっても、痛みや熱を感じることはありません。
    ただし、小線源治療の場合、病巣の中や近くに治療用の器具を入れるため、痛み止めや麻酔を使用することがあります。
  • A
    一般に、放射線治療では、正常細胞の回復を待ちながら、がん細胞を壊すので、何回かに分けて(分割照射)治療します。正常組織がどれだけ放射線照射に耐えられるかによって、分割照射の回数が決まります。放射線治療では、がん病巣が縮小するまで時間がかかることがあります。
    放射線治療後に、経過観察期間後に、がん病巣が残っている場合は、手術や薬物療法など救済治療が検討される場合があります。放射線治療で治せなかったがん病巣を、全て救済できるわけではありません。
  • A
    小線源治療とは主に、子宮がんや前立腺がん、乳がん、口腔がんに対して行われています。放射線を出す小さな線源を、がん病巣内もしくは近くに挿入して、直接体内から病巣に放射線をあてる治療法です。
    一般に行われている高線量率小線源治療では、あらかじめ専門の器具を病巣内に挿入し、その器具内にイリジウムという小線源を遠隔操作で挿入して治療します。
    放射線が届く範囲が狭いためがん病巣に集中して治療できること、がん病巣の位置移動にも追従して精密に治療できることが利点です。
  • A

    通常の外照射の場合、放射線が実際にあたっている時間は1分から10分程度です。
    着替えや準備などを含めて、治療室にいる時間は10分から15分程度です。治療の方法によって、30分以上かかる場合もあります。
    小線源治療の場合、治療内容により1時間から4時間程度と様々です。
    治療時間の詳細については、担当医師に御確認ください。

  • A
    治療の期間は、がんの種類、大きさや場所、治療の目的などによって異なります。
    通常の外照射の場合、1日1回、月曜日から金曜日まで週5回治療を行います。全部で6から8週間の治療を行うこともあれば、1回のみの場合もあります。
    治療のスケジュールは、がんの種類や病態によって様々です。同じがんでも患者一人ひとりの状態によって、スケジュールが異なることがあります。
  • A

    放射線は正常臓器にも当たりますので、副作用が問題になることがあります。例えば、乳がんの放射線治療では、治療部位の皮膚が赤くなることがあります。一般に治療部の外に副作用は生じることはありません。
    同じがんであっても治療法や部位によって副作用は異なりますので、実際に治療する場合は担当する放射線腫瘍医から説明を受けてください。
    全身状態や併用療法にもよりますが、多くの場合、放射線治療は通院で行うことができ、放射線治療中も、たいていは普段通りの生活を続けることができます。

  • A
    副作用の症状は、がんの種類、治療法によって様々ですが、一般に副作用の症状を軽くする支持薬物療法をします。例えば、放射線皮膚炎に対しては軟膏やクリームを塗ります。
    更に詳細をお知りになりたい方は下記サイトを御参照下さい。

    外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。>  各疾患別の放射線治療について(がん研究会有明病院ホームページ)
  • A
    多くの場合は、放射線治療にかかる時間は10分程度と短時間で終わり、副作用も軽微なため、外来通院で受けられます(週1回以上の放射線腫瘍医による外来診療があります。)。
    がんの症状によっては、入院治療が必要な場合があり、薬物療法(化学療法)と組み合わせた治療などを含め、全ての放射線治療が外来で実施可能とは限りませんので、担当医師に御相談ください。
  • A

    頭頸部がんや肺がんでは、放射線治療中に喫煙を続けると治療効果が低下すると言われています。その他のがんでも副作用が強まる場合もあるため、放射線治療中や治療後も禁煙を心がけてください。

  • A
    患者の身体の状況を調べる検査には様々な方法があり、1種類に限らず、様々な種類の検査を組み合わせて行うこともあります。

    【検査項目の例】
    ○ 血液検査、採尿検査、喀痰検査など
    ○ 超音波検査、心電図検査、内視鏡検査など
    ○ レントゲン、CT、MRI、PET/CTなど
  • A
    検査の内容により様々な機器を使用します。
    簡単なものは、体温計や血圧計などから、CTやMRIなどの検査もあります。
    (このような機械を設置する場合、専門の部屋を設け、構造面や安全面に配慮して設置しております。)
  • A
    問診では、体の症状や状態などを患者自身に表現してもらったり、診療に必要な情報を医師の側から伺います。それらを基に、診療に必要とされる検査が計画され、患者に検査の予定や内容が説明されます。診察当日に実施する検査もあれば、予定を組んで行う検査もあります。
  • A
    生検とは正確には「生体検査」と言い、患者の患部の一部を針やメスなどで採取して、顕微鏡などで拡大して見て調べる検査のことを指します。
    どのような方法で患部の一部を切り取るかについては、いくつかの種類があり、経皮的生検(針生検)や内視鏡下生検、外科的生検といったものがあります。
  • A

    生検は、がん細胞の有無を確認するだけではなく、がん細胞自体の性質や特徴を確認することを目的としています。採取したがん細胞の性質や特徴によって、手術・放射線・抗がん剤などの治療の有効性をより科学的に推測をすることが可能になります。最善なる治療を御希望・検討される場合は、生検を受けることを前向きに検討することをお勧めします。

  • A
    一部のがんを除き、多くの場合、がんは何年もの時間を経て大きくなっているといえます。ですから、早期発見、早期治療が必要です。
    しかし、徐々に大きくなっていくので、慌てず、治療方法を十分に理解し、自身が納得した上で治療を受けることが大切です。一か月待ったために手遅れになる、ということはほとんどありません。
    がんの治療を待つ患者にとっては、一刻も早い治療を望む気持ちは十分に理解できますが、治療を待つ間は普段通りの規則正しい生活を送るよう心掛けてください。
    (喫煙をされている方はこれを機に、禁煙に取り組んでいただくことをお勧めします。また、禁煙をしないと手術できないがんもあります。)
  • A
    「がん」であるのか、また、「がん」であった場合、その大きさや進行具合はどれ位なのかを診断するには、通常、1種類だけに限らず、様々な種類の検査を組み合わせて行います。それらの検査結果を基に診断を行いますので、短時間ですぐに結果が出ることは稀で、通常は数週間単位で時間がかかることになります。
    また、検査については、一般的に外来で検査を行いますが、入院して実施しなければならないものもあります。
  • A
    患者の病気の有無や病状などを判断するために質問(問診)したり、身体を調べたりします。診察方法としては、目で見て(視診)、手で触れて(触診)、軽くたたいて(打診)、聴診器で聞いて(聴診)などがあります。
  • A
    「セカンドオピニオン」とは、患者が診断や治療について正しく理解し、納得して治療を受けていただくために、自身の担当医師の意見(ファーストオピニオン)に加えて、担当の医師以外の領域の知識や経験が豊富な専門の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くことです。
    セカンドオピニオンは、専門家の意見を求めることになりますので、有料(保険診療外)となっています。
    治療法や治療方針を選択する前に、その診断や治療法が最良であるか確認したい時に利用すると良いでしょう。
  • A
    相談予定となる医療機関でのセカンドオピニオン予約をしてください。また、現在の診療担当医師に、セカンドオピニオンを受けるための紹介状(診療情報提供書)の作成や血液検査や病理検査、CTやMRIなどの画像検査の資料の準備をお願いします。セカンドオピニオンは作成された紹介状や資料を基に行われます。
  • A

    手術とは外科的器具、メスなどを用いて患部(腫瘍)を切除する、いわゆる外科的な治療のことを言います。
    手術方法は臓器によって様々ですが、さらにがんの進行度合いやがんの大きさ、転移の有無などによっても方法が異なります。手術による体にかかる負担を侵襲と言いますが、侵襲の大きな手術や麻酔を比較的安全に行うことが可能になってきましたので、治療成績の向上を目的として、手術は拡大の一途をたどっていました。しかし、手術後の合併症や機能障害などにより、より侵襲の少ない手術方法(低侵襲手術)が提唱されています。最近では、患者とがんの大きさや進展度などのバランスを総合的に判断して、実施されております。
    手術前には通常、麻酔(局所麻酔、全身麻酔)が施されますので、術中は痛みなく手術が行われます。
    さらに、手術(主に5大がん)の詳細をお知りになりたい方は、下記サイトを御参照下さい。

    > 胃がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    > 大腸がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    >外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。 乳がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    >外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。 肝がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    > 肺がん(国立がん研究センターがん情報サービス)

  • A
    治療期間は臓器によって様々ですが、さらにがんの進行度合いやがんの大きさ、転移の有無などによっても治療期間が異なります。
    さらに、詳細(主に5大がん)をお知りになりたい方は、下記サイトを御参照ください。

    > 胃がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    > 大腸がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    > 乳がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    > 肝がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
    > 肺がん(国立がん研究センターがん情報サービス)
  • A
    手術後には後遺症が発生することがあります。
    例えば、胃がんの手術後には腸閉塞(手術後、お腹の中で腸があちこちにくっつく(癒着)ことがあり、腸が急に曲がったり、狭くなってしまい、食べ物の流れが閉ざされて、便やガスが出なくなってしまうこと)、ダンピング症候群(胃を切除すると食物が急に腸に流れ込む状態になり、血液中の糖分が低くなるために起きる不快な症状で冷や汗、脈が速くなったり、動悸、体がだるくなったりします)、貧血、骨の異常、逆流性食道炎などの症状が、発生頻度は高くないものの現れることがあります。
    後遺症の症状は、手術する部位により様々ですので、詳細な後遺症への対処法については担当医師に御相談下さい。
  • A
    例えば、胃がんの手術後の後遺症への対応を挙げると、
    腸閉塞:しばらく食事を止めると治ることが多いのですが、時には癒着を剥がしたり、ねじれを治す手術が必要なこともあります。痛みが強い場合には医師の診察を受けてください。
    ダンピング症候群:血液中の糖分を上げるために、あめ玉や氷砂糖など甘い飲み物を飲んでいただくこともあります。
    貧血:胃全摘出や切除範囲が大きな場合に発生率は高く、術後数年してから置きますので、定期的に血液検査をして、不足していれば鉄分やビタミンB12を補給していただく必要があります。
    骨の異常:定期的に骨密度を測定し、必要であればカルシウムの吸収を高める活性型ビタミンD3を投与します。術後は、努めて乳製品を取って、カルシウムの補給に気をつけましょう。
    逆流性食道炎:上半身を高くして寝るとか、粘膜保護剤、制酸剤、酵素阻害剤など様々な薬を投与します。
    なお、詳細な後遺症への対処法については担当医師に御相談下さい。
  • A
    化学療法は薬物療法とも呼ばれ、簡単に言えば薬(抗がん剤)を使ったがんの治療法です。薬といっても飲み薬や点滴、注射もあります。
    さらに化学療法の詳細をお知りになりたい方は下記サイトを御参照ください。

    > 化学療法(がん研究会有明病院ホームページ)
  • A
    以前は、薬物療法(化学療法)は副作用対策のため、入院で実施されることが一般的でした。しかし、近年は、医学の発展や医療費を巡る環境の変化、社会的ニーズの変化等により、外来で薬物療法(化学療法)を実施するケースが多くなってきました。
    外来での薬物療法(化学療法)のスタート時期は担当医師の判断によりますが、全ての薬物療法(化学療法)が外来で実施可能とは限りませんので、担当医師に御相談ください。
  • A
    投薬期間、頻度は薬剤、がんの種類によって様々です。また、手術の前後に行う薬物療法(術前術後療法)あるいは放射線療法と併用する薬物療法(放射線併用化学療法)は投与期間(2から12か月)がほぼ決まっていますが、再発転移のがんの治療では、効果と副作用をみながら投与期間を決めていくことが多くなります。点滴注射の頻度、投与時間も薬剤により様々で、3から4週間ごとが最も多いのですが、毎週投与の薬剤もあり、また、5分で終わる薬剤もあれば、4から5日間持続点滴の薬剤もあります。
  • A
    抗がん剤は、がん細胞を死滅させる作用とともに、正常な細胞をも傷つけてしまうという副作用があります。
    その結果、副作用として、嘔気・嘔吐、脱毛、手足のしびれ、白血球の減少、発熱、血小板の減少などといった身体症状が現れます。ただし、使う抗がん剤によって、また、人によって症状が重くなったり軽かったり、全ての副作用の症状が出るとは限りません。
  • A
    抗がん剤で気持ち悪くなったり、食欲が落ちてしまうのはつらいものです。現在は、抗がん剤による吐き気・嘔吐を予防する薬が発達してかなり抑えられるようになりましたが、全ての副作用に対処する方法はないのが現状です。ただし、副作用を極力減少させたり、事前に予防する方法もありますので、担当医師に御相談ください。
  • A
    副作用による身体症状としては、嘔気・嘔吐、脱毛、手足のしびれ、白血球の減少、発熱、血小板の減少などが現れますが、治療終了後、ほとんどの副作用は徐々に回復していったり、治まっていきます。副作用の続く期間については、人によって様々ですが、不快な症状が続く場合は、担当医師に御相談ください。また、薬剤によっては子供ができにくくなるなどの後遺症が残ることもあり、担当医師に御相談ください。